神様の学園には生活を営む寮が存在し、寮には食事を提供する食堂がある。
蝋燭の明かりが満ちるその場所へ私は毎朝通い、
春が終わろうとしている今日も普段と同じ時刻に足を踏み入れた。
「……あ。おはようございます」
見慣れた顔に挨拶すれば、彼らはすぐに視線をくれた。
「僕からもおはよう! おはよう、妖精さん」
「ぉは、よぅ……ござぃます…………」
最初にアポロンの弾んだ声が聞こえ、その次に眠たげな月人の挨拶。そして最後に……
「今朝の陽光は生命の息吹を感じさせる色合いで、今日も素敵な時間を過ごせそうだね」
優雅に紅茶を手にしたバルドルが上品な言葉をくれた。
「バルドルさんの表現、面白いですね」
と私は素直に感想を述べる。すると彼は意外そうに眉をひそめた。
「わたしは普通に挨拶したつもりだったのだけれど」
そんな様子も含めて彼らしいと思った。
意図して飾っているわけではなく自然と綺麗な言葉を紡ぐ神様……
それがバルドル・フリングホルニだ。
「ああ、そうだ」
ふと思い出した様子で彼は私に手招きをする。
「隣においで。少し話をしよう」
「え? あ、はい」
誘いを受けて、私はアポロンたちのテーブルにお邪魔した。
同時にバルドルは上着のポケットから分厚いメモ帳を取り出した。
「人の文化を調べていてね……今は和の文化を中心に学んでいるんだ。
だから日本人であるあなたと話せば色々と得るものがあるんじゃないかって」
「あ、なるほど」
「……見て。この文章にも和を取り入れてみたんだ。へんぴつで書いてある」
「へん、ぴつ?」
続きは電撃Girl's Style3月号にて御覧ください。