- 【ディオニュソス】
- ……いい子だから、今はオレの言う通りにして?
- 【草薙結衣】
- ……っ。
- 【草薙結衣】
- ……!!
ディオニュソスさん、大丈夫ですか?
- 【ディオニュソス】
- ……っ、ああ、これくらいなんてことない。
- 【草薙結衣】
- え!? え!?
あの、陽さん!?
- 【陽】
- ああ、貴女はなんと
かわいい子なのだろう!
- 【草薙結衣】
- 皆、あなたを必要としているんです!
- 【陽】
- ……私には過ぎた言葉だ。
- 答える代わりに、トールは真っ直ぐ
私に向き合い、ゆっくりと手を伸ばしてきた。
- 【草薙結衣】
- えっ……?
- そして、その大きな手で私の頭に触れ、
優しく撫で始める。
- 【トール】
- ……大きな声を出して、悪かった。
- 触れられた手の暖かさと、はぐらかされて
いるという悲しさで、私は何と言っていいか
わからなくなってしまう。
- 【トール】
- ……その話はもういい。
……踏み込むべきでは、ないことだ。
- 【トール】
- ……今更なんかじゃない。
……みんな、俺を待ってくれていた。
…………だから……
- 【草薙結衣】
- 北欧最強の、戦神……まさか……
- 【メリッサ】
- そっか、俺の願いが叶ったんだな。
ああ……やった、やったぜ、くたなぎ!
俺はとうとう念願の人間になれたんだ。
- 【草薙結衣】
- ひゃっ?!
- バランスを崩した私は、メリッサの上に
重なるように倒れ込んでしまっていた。
- 【草薙結衣】
- ……!!
- 【メリッサ】
- …………!!
- メリッサを押し倒しているような状態で
まるで時が止まったかのような感覚になる。
- 唇が触れてしまいそうな距離で、
息を吸うのも忘れてしまいそうだった。
- 【草薙結衣】
- あ、あの……
- メリッサの瞳がすぐ間近にあり、
美しいオッドアイが、私を映していると
意識すると、目が離せない。
- 世界から全ての音が消えてしまったようで
ただ、うるさいほどの自分の鼓動だけが
耳の奥まで響いていた。
- 【アポロン】
- えいっ!
- 【草薙結衣】
- きゃっ。
- 【ハデス】
- こ、こら、アポロン。
離せ。
- 【アポロン】
- 何があっても離さないんだからね!
絶対、絶対、一緒にやるんだから。
- アポロンが私とハデスの肩を抱き、
3人の距離を近付ける。
- 【アポロン】
- 始まる前から、不幸だ~とか
言ってたら、何も始まらないよ。
とにかくやってみよう!
- 【月人】
- 何がそんなに惹きつけるのか……
興味深いです。
- 【草薙結衣】
- うさまろの魅力ですか?
それはやっぱり、かわいいところですよ!
毛皮もふわふわで、癒されます。
- 【尊】
- 癒し……?
まあ、気持ちよさそうでは、あるよな。
- 男性の髪に触れることなんてないから、
なんだか緊張してしまう。
- 【草薙結衣】
- バルドルさん、
痛かったら言ってくださいね。
- 【バルドル】
- 大丈夫だよ。
あなたの手は、とても優しいね。
- 後ろに立っているのでバルドルの顔は
見えないが、その声音は穏やかで、
気を遣って言っているのではなさそうだ。
- 【ロキ】
- これくらい簡単でショ?
アンタの髪も、オレが編んであげよっか☆
- バルドルの隣で退屈そうに
ベンチの背にもたれていたロキが、
ぱっと立ち上がる。
- 戸惑っている間に背後に回り込まれ、
ロキの手が私の髪の毛に触れていた。
- 【トト】
- お前がそう思うのは勝手だが、
私を巻き込むな。
- トトが、いよいよ煩わしそうな表情を浮かべて、
アヌビスに言う。
このままだと言い合いになってしまいそうだ。
- 【草薙結衣】
- と、とにかく今は目の前の課題に集中します!
アヌビスくん、本当にありがとう!
元気出たよ!
- 【アヌビス】
- カー! バラバラ!
(うん! どういたしまして!)
- 【ディオニュソス】
- ん~、嫌いか好きかで言ったら~。好き……かな。
- 【陽】
- 自分を信じればいい。貴女の心には強さが宿っている。
- 【トール】
- ……人間は神よりも脆く出来ているからな。
- 【メリッサ】
- 俺はくたなぎの世話係ってだけじゃねぇ。一番の味方だとでも思っとけよ。